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                                   § 富と経済ー「経済学」とは何か §

                                  ギリシァのoikonomikosー世界最古の「」経済学」の特徴

 富と権力が密接に連関する富社会では、「政治とは経済であり、経済とは政治である」ということになる。

 economicsの語源とされる家政oikonomikosにもpolitical economyを髣髴とさせる側面があった。ソクラテスの弟子クセノフォン(前427−前355年頃)は、『オイコノミコス 家政について』(越前谷悦子訳、リーベル出版、2010年)を著し、これを精しく説明している。oikonomikosとは、oikos「家」とnomosu「統治する、管理する」からなる言葉であり、訳者は、クセノフォンは、「単なる家政論にとどまらず、家政を通しての国政論でもあり、統治、統率の方法論でもある」(訳者解説、178頁)としている。それはなぜか。特に大土地所有者貴族・騎士にとっては、家政の維持は軍事的ポリス共同体維持には不可欠であったからである。国家領域、人口がもっと大きければ、「国家の基礎は民富」などの把握は自然にでてきたであろうが(例えば、人口約500万人の古代日本などを想起)、都市国家であり、市民規模も数万人では、「都市国家の基礎は市民家政」という認識にならざをえなかったのであろう。だが、国家・人口規模の相違はあるものの、「国家の基礎は民富」という発想原理では同じなのであり、ギリシアでは、市民家政は、軍事的ポリスを支える最小単位として重要とされていたのである。おうおうに経済学の語源とされるオイコノミコスとは、軍事的ポリスの基礎単位の管理論だったということが留意されよう。Political Economyそのものである。

 少し、この点を具体的に見ておこう。ソクラテスは戦争遂行の観点から、「良き家政家とは、敵から利益を得るように敵に対してもまた、対処の仕方を心得ている」(『オイコノミコス』16頁)とし、「たくさんの家」「個人の家も僭主の館」も「戦争のおかげで大きくなっている」(16頁)とする。

 イスマコス(大土地所有者)は軍隊を例に家政の整理整頓の重要性を説き、妻に、「妻・・もまた、家の内のことに定められた規則の番人なのだ、だから、丁度、指揮官が部隊を視察するように、適時、用具を注意深く調べるように、議会が馬や騎士を検分するように、家財道具の保存状態の善し悪しを検分するように、そして、女王のように、功績のある者を自分の度量によって褒賞し、時には、その必要ある者を叱責するように」(『オイコノミコス』82頁)と、軍人のように家の監督をすることを指示した。

 大土地所有者の経営については、ソクラテスはその軍事的管理を提唱した。ソクラテスは、「ペルシャの王様・・・は農業と戦術は最も高貴で必要な仕事のうちにはいると信じていて、双方に多大な関心を寄せている」(『オイコノミコス』38頁)とし、「結局のところ、大体、土地を良く耕していない人達というのは、警備隊を養うことが出来ないし、税金を払うことも出来ないということだ」(41頁)とした。ソクラテスは、「農業はまた、人々を指揮することにも習熟させ」、「農夫が農奴達を励ます回数は、指揮官が兵達を励ます回数に劣っていない」(『オイコノミコス』48頁)とした。イスマコスは、「農業でも、政治でも、家政や戦争でも、すべての事柄に共通なのは、指揮の仕方であ」(158頁)り、「指揮官の才覚によってある集団と他の集団の間に大きな差が生じるというあなたの意見に賛成です」(158ー9頁)とした。

 さらに、家政oikonomikosのみならず、当時のギリシアの善・美・名誉などもギリシア軍事的ポリス体制に深く関わっていたのである。プラトン『法律』では、アテナイ人は、第一に「魂に関する善いものが、そこに節制のある場合に、最も名誉のあるもの」であり、第二は「肉体に関する美しいもの善いもの」とし、第三に「財産や金銭に関して善いものといわれているもの」を位置づけた。アテナイ人は、ギリシアが慢性的な戦争状態であるだけに、士気を高め、緊張を和らがせるために、上位に善・名誉・美をおき、下位に金銭をおいたのである(プラトン『法律』[『プラトン全集』9、141−2頁])。

 第二に関して、アテナイ人は「共同食事と体育とは立法家によって戦争目当てに発明されている」とし、スパルタ人(メギルロス)から同意される(プラトン『法律』[『プラトン全集』9、角川書店、1975年、24頁])。さらに、スパルタ人は、「互いに手を以ってやり合う格闘」、「さんざん擲り合ってなされる一種の掠奪」、「クリュテイア」(「冬に裸足歩き、寝床に眠らないで、従者の手をかりず自分で自分の用を足して夜となく昼となく国中を徘徊するもの」)、「ギュムノパイディアイ」(「暑熱の力と戦う」もの)などがあると付け足した(プラトン『法律』[『プラトン全集』9、25頁])。ギリシア肉体美は戦争と深く関わっていたのである。まさに、当時のギリシアでは、善・名誉・美などが軍事的士気高揚に不可欠のものとされていたことが確認される。単なる善・名誉・美ではないのである。危険な香に満ち満ちているのである。我々は、手放しでギリシアの善・美・名誉を賛美することはできないのである。


 近代経済学の祖といわれるアダム・スミスは、「経済学」とはPolitical Economy以外の何ものでもないことを明らかにした。以後、厚生経済・福祉経済・環境経済などが登場してきて、いつしかPolitical Economyという名称は消え去ったかであるが、厚生経済・福祉経済・環境経済などの主要政策主体が権力である点ではPolitical Economyに何ら変わりはないのである。

             

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